【第2章 農業の魅力に気づくまで】(2/4)
そうですね。俺の想いってことで敢えて言うと、俺、昔、すっごく農業が嫌いだったんですよね。農業が嫌で嫌でしょうがない人間だった。そういう幼少期を過ごしてきたので、逆にそういった負の気持ちから生まれるものって、意外と強かったりするじゃないですか。何か変えてやろうという気持ちとが、人一倍強いのかな。今までの農業のイメージや農家のできることみたいなものを変えたかった。
−農業の何がそんなに嫌だったんですか。
とにかく農作業自体が嫌だった。朝早く起こされて、学校行く前に肉体労働をさせられて…。周りの人たちはなんでしないんだろうって思っていたんですよ。中学の時は、農家の倅であっても手伝いをさせられるっていう話は聞かなかったです。筋蒔き(お米の種まき)と田植えは手伝うんですけど、朝、農作業を手伝ってから登校するというのはあまり聞かなかったかな。高校なんて特にそうですよね。誰もいない。自分だけなんでだよ!?っていうのがすごくあって。
−でも嫌だった農業に戻ってきたわけですよね。
農業機械販売会社の営業の仕事をしたことがきっかけだと思っています。あの頃、農家さんを廻って営業を続けていくうちに自分なりに「良い農家さん」の姿というのが見えてくるんです。
−農業を外から見るわけですね。「良い農家さん」というのは、良い農作物を作る農家さんということですか。
あとは、しっかりと利益を出している農家さんですね。営業をやっていて、毎日、数字に追われているわけです。休日だって機械が壊れたとなれば、呼び出されるから休みはなかったですよ。そういった生活に疲れていたんでしょうね。かたや農家さんは忙しい時期は、がっつり働くけれども、冬場はしっかりと休みを取って海外旅行に行ったりしてメリハリがある。やっぱりすごく豊かだなと思いましたね。
−営業マンとしての成績のプレッシャーや組織で働く悩みごとと、農業のそれとは、また違うでしょうからね。そちらの世界を見て、改めて農業の良さを実感したということですね。もしそれがなかったら今も農業が嫌だったかも?
そうかもしれないですね。東京で就職していたら戻ってこなかったかもしれないですね。農業機械販売会社で営業マンをしたからこそ、一つのきっかけになっていると思います。あとは、親父達が会社を立ち上げたということもあります。以前、酒の席で、現在の社長である親父に「会社を作るなら、俺は農家をやるよ。」と話したことがあり、そうしたら、本当に作っちゃったんですよ。農家の魅力というのも感じ始めていた時期でもあったし、良いきっかけでしたね。
−「良い農家さん」というのに出会ったことで、具体的に自分もこうなりたいというイメージが湧いてきたところで、自分が実践する基盤が出来たのですね。
あの頃から思っていたのは、「やっぱりやり方なんだな」と。上手にやっている人は上手にできている、つまり、良い農業経営をしているんです、生産だけでなく、販売、発信の仕方も含めて。そういった部分を見て来れたというのは、今の原点につながっているのかもしれません。
−嫌いだった農業からひと過程を経て…。
だからこそ逆に、なんか変えてやろう、というか、やるからには自分が納得出来る「良いイメージの農業」にしてやろうという思いが、人一倍強いんだと思います。
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