「農園のカフェ厨房 トネリコ」店長
藤田瑠美子
農産物の魅力や素材の本当に大切なところを知ってもらいたい。
(取材日:2017年3月)【第1章 オープンからこの1年を振り返って】(1/3)
−オープンして1年になりますね。いろいろあったと思いますが、この1年は早かったですか、それとも長かったですか。
あっという間といえばあっという間ですけど、正直長かったですね。
−そうなんですね!?どんな点でそのように感じましたか。
日々やることがたくさんある中で、解決することもあれば、解決しないことも常にあって、自分で考える時間もそうですし…やはり長かったですね。
−ひとつ解決すればまた別の課題も増えてそれを繰り返しているような?
それはありますね。
−1年前に思い描いていた「そら野テラス」や「トネリコ」のイメージと今を比較してどうですか。
オープン直前は、私自身、1年後のお店や自分の姿を想像できていませんでした。ああしたいこうしたいという希望のようなものは、ありましたけど。
−最初に具体的なイメージがあってそれに向かって、というよりも日々形作っていくという感じでしょうか。これまで経験のないことですものね。
そうなんですよね。全部ゼロからのスタートだったので、想像ができなかったというのはありますね。1年経って、徐々にですが、作り上げてきた「トネリコ」や農園が良い方向に向かっているな、とは思いますね。
−点数をつけるとしたら何点くらいをあげますか。
まだまだ全然なので、半分。50点…あげたい。
−あげたい(笑)。でも50点未満だとしても、徐々に良い方向に向かっているということですよね。今、どんな感じになってきているかなど、キーワードにするとしたらいかがでしょう。
それはお店についてですか?
−そうですね、瑠美子さんには、そら野テラスとトネリコと両方伺っておきましょうか。重なる部分もあったりするかもしれませんし。
元々「お客様がゆっくりできるスペースを作りたい」という思いでカフェを作ったんです。お客様を見ていると、景色を眺め、本当にこの環境や空間をすごく楽しんでいるなあと感じます。その点では、私たちが望んでいた方向に向かっているかなという気はします。空間作りは一番大事にしているところなんです。
−お店の名前であります「トネリコ」の由来についてお聞きしたいのですが、どのようなきっかけで生まれたのですか。
名付け親は、デザインを担当してくださったタンジェントデザインさんです。当初、いろんな候補があった中で、まずは覚えてもらいやすいというのが一番の条件でした。「トネリコ」は、はざ木の和名であり、お米農家の私達とも親和性がありましたし、響きもとても良かったんです。
---社長--- はざ木は、新潟の代表的な原風景の一つ。昔はこれしか稲を乾燥させる道具がなかったから、一種の農機具でもあったんです。更に、調べてみると、はざ木にはイボタロウムシというカイガラムシがつき、昔は、そのムシを敷居に塗って戸の滑りを良くしたそうです。「イボタを塗って直した」って言われていました。それで「戸に塗る木」から「トネリコ」になったらしいです。イボタロウムシを取るにも一本からでは取れません。つまり、はざ木は一本では役に立たないけど、並木になることで、農機具としても潤滑剤としても、やっと機能するんです。みんなで肩寄せ合って初めて成り立つということになる。そうしたら、この名前は、ピッタンコじゃないかって!農家もみんな一緒になって力を出していくんですから。そして、新潟の原風景ということも重なって「ああ、いい名前だ」って思ったんです。それで俺は大賛成でした。
---瑠美子--- そうそう、「トネリコ」は、大分以前から、皆一致して決めていましたね。昔のノートを見ると候補の名前がいっぱいあったんですけど。
---社長--- 最初、俺は「トネリコって何だ?」って思ったけどね(笑)
−その引っかかりがいいんでしょうね。「はざ木」は知っていても、「トネリコ」って聞いたことはない。何だろう?って関心を持って調べてみたくなります。
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